咲き誇ったまま、落ちる姿は凄惨で。







04 : 椿





「可哀想」


そう言って、彼女は道の隅に落ちた花を手に取った。


「可哀想かな」


振り返る視線を受けて、笑む。皮肉に。


「綺麗に咲いた瞬間に散ることができたんだから、幸せじゃないの?」


彼女は、くしゃりと涙を堪えた笑みを浮かべた。


「ばか」


左手で椿を優しく包み、右手で彼の左頬を包む。


「そんな風に、あいつが居ないこと、正当化しなくても良いんだよ」


冷たい指先が、微かに震えた。


「・・・ごめん。まだ、引き摺ってて」


こつり、と、額を合わせる。


「だから、一緒にいるんだろ?あたし達」


頷くと、前髪が揺れた。


「あいつは、もっと生きたかったよ。きっと」


自分を責めるように言う。


「だから、落ちた花の姿に重ねるな」


耐えられなくて、彼はいやいやをするように首を振った。


「・・・かな、しい」


彼の吐き出すような呟きに、彼女が小さく頷く。


「うん・・・寂しいな」


瞼をきつく閉じる。


涙が零れないように。






「真田、真田!昨日一緒に居た子、誰?彼女?!」


友人に見られていたらしい。
好奇心の篭った瞳でそう問われたけれど、違うよ、と言って緩く首を振った。


「じゃあなんだよーあんなにいちゃいちゃしてたくせにさー」


そんなんじゃないよ。
好きな人の、好きだった女の子。


そう言ったら、友人は意味が分からない、という顔で首を捻った。





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